総長は、甘くて危険な吸血鬼




「氷とかアイスとか欲しかったら貰ってくるけど、欲しい?」


氷……

相変わらず頭は熱いから氷は欲しいけど…

今は、


『ここにいて…欲しい…』



私は布団から手を伸ばして、叶兎くんの服の裾をギュッと掴んだ。

普段のなら私こんなに素直になれない気がする。


「……分かった、ここにいるよ」

『うん……。ふふっ』

「何、いきなりニコニコして…」

『好きだなーって、思っただけ』


頭はまだぼんやりしてて、思ったことがそのまま口から出てしまう。
きっと顔も熱で火照っているだろうな、と思いながらも、止まらない。


「………ねー…胡桃って風邪ひくと甘えたになるタイプなの…?」


『…んー、そうかも』


もうどうにでもなれー!っていう勢いで、普段の私からは想像できない言葉がどんどん出てくる。

今なら風邪を理由に何言っても許される気がする。風邪のせいだもん。


「…風邪治ったら、覚悟して」

『え?』

「煽られた分だけ血も貰うから」


叶兎くん、めちゃくちゃ笑顔でそう言った。

怖い。この人怖い。
その笑顔が1番怖いです…。


『貧血にならない程度で…お願いしマス…』

「勿論、血だけじゃ終わらないからね?」


……しばらくは風邪ひいてたいかも〜…なんて、

多分私の心臓が持たない。

叶兎くん優しいけど、こういうところは容赦ないから…ほんと…毎日毎日心臓が…


「胡桃、顔赤い」


さっきまでの叶兎くんの動揺はどこへやら、いつもの調子で楽しそうに言った。

やり返された。

見事にさっき私が言った言葉を、返された。

私、叶兎くんにはまだまだ敵わないみたいだ。



『ムカつくっ…!』

「そりゃどうも」

『褒めてないっ!』

「はい、熱が上がる前にさっさと寝て」



結局その後も、私が寝付くまで横にいてくれた。


暖かくて、安心感があって、でも少しドキドキするその距離感。
風邪で体は弱っているはずなのに、心はなぜか満たされている。


そこから数時間寝ていたみたいで、目を覚ました時には夜になっていた。



< 160 / 405 >

この作品をシェア

pagetop