総長は、甘くて危険な吸血鬼


教室に入ると、奥の隅に叶兎くんと春流くんがいた。

叶兎くんは赤と黒のスーツに大きなマントを羽織っていて、まるで本物の吸血鬼のよう。

本人吸血鬼だからコスプレじゃない気がするけど…。


春流くんは叶兎くんとは反対に、白をベースにした王子様風の衣装で、何だかこの2人のところだけ輝いていて空気感が違う気がする。


いつもなら人だかりができているのに今日は珍しく人だかりがなくて、その代わりに2人から若干離れた位置にいる女の子達がじっと視線を向けている。

多分、近づきにくいんだろう。



私もじーっと叶兎くんのことを見ていたら、
その視線に気付いたのか一瞬だけ目が合ったけど、ふいっと逸らされた。


『…ね、ねえ今目逸らされたんだけどやっぱり似合ってないのかな…?!』


あの感じ結構傷つくんだけど!!
と心音ちゃんに小声で言ったら


「いやー、あれはそういうのじゃないと思うよ?」


そういうのじゃないって何…!

胸の奥がもやもやして、裏方にシフト変えてもらおうかと本気で思う。


一応、コスプレカフェとは言っても「カフェ」なので数人は裏で食材担当の係がいて、私はじゃんけんで勝ったはずなのになぜかこの露出度の高い衣装を着る羽目になっている。


そう、他でもない叶兎くんのせいです…!!


< 163 / 405 >

この作品をシェア

pagetop