総長は、甘くて危険な吸血鬼


『痛っ、…やめっ──!』



熱い感覚が一気に広がる。
何が起きているのか理解できなかった。


何、どういうこと、

血を、吸われてる…?

朔……吸血鬼なの?


頭が混乱して、思考が追いつかなかった。

問いただしたい言葉はいくつも浮かぶのに、彼の力が強すぎて身体が動かない。



「っ…!!」



混乱する私の肩を突然ぐっと強い力が引き寄せた。
同時に、朔の身体が後方へ乱暴に突き飛ばされる。

牙が抜けた瞬間、わずかな痛みと共に赤い雫が腕を伝った。


よろめく私の肩を抱き寄せたのは、叶兎くん。
私を庇うように前に立つ。



「おい。胡桃に触ってんじゃねぇよ」



その声は低く、怒りを隠そうともしていない。

叩いた時の大きい音とガチギレモードの叶兎くんに、
クラスにいた人達も「何だ何だ」とざわついている。

叩かれた当人は何事もなかったかのように、不気味な笑顔を浮かべている。

油断してた私も悪いけど、まさか朔にあんなことされるとは思ってなかった



「へぇ、White Lillyの総長サマは随分とくーちゃんに惚れてるみたいだね」

「何、お前どっかの組織の回し者?」

「それに、くーちゃんの血って甘いんだねー君のおかげ?」

「てめぇ…」



叶兎くんの目が、ギラリと光る。
次の瞬間、彼は朔の胸ぐらを掴んで椅子から引きずり上げた。

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