総長は、甘くて危険な吸血鬼
凛ちゃんの姿を見つけて安堵したのも束の間、その隣には見慣れない二人組の男の子が立っていて、どうやら彼女に話しかけているところだった。
「ねぇ、君どこの学校の子?随分と綺麗な顔立ちだね」
「…あ…えと…」
「彼氏とかいる?俺達彼女募集中なんだけど」
「あの…私…その…」
軽薄な笑い声に、凛ちゃんが小さく肩を竦めて視線を逸らす。
返答に詰まっているその様子を見れば、明らかに知り合いではないと分かる。
…ナンパかな。
「あいつら…!叶兎の妹ナンパするとか命知らずにも程があるだろ!…ってあれ、胡桃ちゃん?」
頭で「私が出ていっても意味ないかも」と一瞬は考えたけど、
気づけばもう走り出していた。
自分がナンパされた時は何もできずにあたふたしたくせに、困ってる人を目の前にするとどうしても黙って見ていられない。
『ちょっと…この子困ってるじゃん。ナンパならよそでやってもらえる?』
「…はぁ?何お前」
『この子の友達ですけど』
「友達?…つーか君も可愛いね」
普通、やめてって言った側からまたナンパしてくる?
制服が違うから多分この学園の生徒ではないけど、この街治安悪かったせいでチャラいのが多いのかな…
……こうなったら。
『…赤羽叶兎って知ってます?』
「は?知ってるけど、だから?」
『私は彼の彼女だしこの子は彼の妹なんだけど』
「は…」
『まだ何か?』
声が自然と冷たくなる。
さっきまでは叶兎くんの名前を使うのは申し訳ないと言うか、少し抵抗があったけど……今は妹ちゃんを守るためだ。