総長は、甘くて危険な吸血鬼

凛ちゃんの姿を見つけて安堵したのも束の間、その隣には見慣れない二人組の男の子が立っていて、どうやら彼女に話しかけているところだった。


「ねぇ、君どこの学校の子?随分と綺麗な顔立ちだね」

「…あ…えと…」

「彼氏とかいる?俺達彼女募集中なんだけど」

「あの…私…その…」


軽薄な笑い声に、凛ちゃんが小さく肩を竦めて視線を逸らす。

返答に詰まっているその様子を見れば、明らかに知り合いではないと分かる。

…ナンパかな。


「あいつら…!叶兎の妹ナンパするとか命知らずにも程があるだろ!…ってあれ、胡桃ちゃん?」


頭で「私が出ていっても意味ないかも」と一瞬は考えたけど、

気づけばもう走り出していた。

自分がナンパされた時は何もできずにあたふたしたくせに、困ってる人を目の前にするとどうしても黙って見ていられない。


『ちょっと…この子困ってるじゃん。ナンパならよそでやってもらえる?』

「…はぁ?何お前」

『この子の友達ですけど』

「友達?…つーか君も可愛いね」


普通、やめてって言った側からまたナンパしてくる?

制服が違うから多分この学園の生徒ではないけど、この街治安悪かったせいでチャラいのが多いのかな…

……こうなったら。


『…赤羽叶兎って知ってます?』

「は?知ってるけど、だから?」

『私は彼の彼女だしこの子は彼の妹なんだけど』

「は…」

『まだ何か?』


声が自然と冷たくなる。

さっきまでは叶兎くんの名前を使うのは申し訳ないと言うか、少し抵抗があったけど……今は妹ちゃんを守るためだ。

< 203 / 405 >

この作品をシェア

pagetop