総長は、甘くて危険な吸血鬼


「さっき……助けてくれてありがとうこざいました」

『…!』


思わず凛ちゃんを見た。

……さっきまでより、表情が柔らかい。

真紅の瞳が夕陽を映して、宝石みたいに綺麗で……つい、見とれてしまった。


『…綺麗な瞳だね』

「…え?」

『……あっ!えっと、その、ナンパじゃないからね!?』


自分でも何を言っているのかよく分からないけど、とりあえ謎の弁明をしておく。

叶兎くんによく似た真っ赤な瞳、その目で真っ直ぐ見られると魅了されてしまいそうだ。

けれど凛ちゃんは驚いたように瞬きをして―


「…初めて言われました」


こんなに綺麗な瞳と顔なら今までに何回も言われてそうな気がするけど…

凛ちゃんは、嬉しそうというよりは不思議そうだった。


「この色、みんな怖いって言う。私……人見知りだし、目つきも悪いみたいだから」


…もしかしてあの時の凛ちゃん、私を睨んだ訳ではなくただ目つきが怖かっただけ…?

今話してる感じだと、多分私嫌われてはいなそうだし。


「…だから、綺麗なんて言う人は初めて」


吸血鬼ってみんな綺麗な顔立ちをしてるけど、確かに瞳の色は特徴的だしこういう苦労もあるんだな…


「胡桃さんって、良い人ですね。」


……あ、彼氏の妹に“良い人”って言われた……!

なんか、すごく嬉しい……!

そんなことを内心で喜んでいたら、凛ちゃんが小首を傾げるように言った。

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