総長は、甘くて危険な吸血鬼
「あれ、胡桃っちじゃん。お疲れ〜」
『お疲れ様!今からどこか行くの?』
エレベーターから降りてきた天音くんは私服に着替えていて、今からどこか出かけるように見えた。
「ん、ちょっと野暮用でねー。あ、門限過ぎるからこれ学校にはナイショな?」
悪びれることなく、平然と門限破りを宣言する天音くん。
前に自分も破ったことがあるから強くは言えないけど、突っ込みどころ満載だ。
「…そういえば、今日BSの総長に会ったって聞いたけどこれホント?」
彼は私の横を通り過ぎる前、ふっと身を寄せて小さな声を落とした。
『うん、会ったけど…何で?』
叶兎くん達から聞いたのかな、みんなに心配かけたくないしあんまり広めるつもりなかったんだけど…
けど、天音くんは深く追及することもなく、
「…いや、胡桃ちゃんが無事なら良かったよ。じゃ、また明日ねー」
『あ、うん、?また明日!』
あっさりとそう言って、夜の廊下を歩いて行ってしまった。
相変わらず何を考えてるのかわからないし掴みどころのない人だな…
そんなことを考えながら寮の部屋に戻ると、ロビーに生徒会のみんなが集まっていた。机の上には沢山の料理とお菓子が並べられていて、パーティーでもするのか…?という状況だ。
「あ!胡桃ちゃんおかえり〜」
春流くんが私に気づいたみたいでこちらに声をかけると、ソファに座っているみんなもおかえりと出迎えてくれた。
『ただいま!みんなで何してるの?』
「文化祭1日目お疲れ様パーティーだ」
“パーティー”なんて言葉を1番言わなそうな桐葉くんが、
グラスに飲み物を注ぎながら言った。
この人たち改めて結構自由人だよな…
「胡桃はここね」
ご丁寧に叶兎くんの隣には私が座るスペースをあけてくれていたので、自然にそこへ誘導される。
一度部屋に荷物を置いてから戻り、指定された場所に腰を下ろした。