総長は、甘くて危険な吸血鬼


「てか天音は?」

「あー、なんか出かけるって言って出てった」

『天音くんならさっきエレベーターの前で会ったけど、野暮用が…みたいなこと言ってたよ』


この時間に誰かが出かけるのはどうやら日常茶飯事らしく、みんな特に驚いてはいないみたいだった。


「そういえば、あの後大丈夫だった?」

『あの後?』


春流くんが料理を取り分けながら何気なく尋ねる。

テーブルに並ぶご馳走は、全部九条くんが作ったらしい。
見た目も香りもレストラン並みで、改めてこの人の料理の腕前に驚かされる。

あの後……朔と会った時のことかな。


「怪我とか…」

『平気だよ!心配してくれてありがとう』


血を吸われたので怪我はしてなくはないけど、叶兎くんが治してくれたので…

とはいえまさか朔に血を吸われるなんて思ってもみなかったけど。


「ちょっと待った、初耳なんだが。文化祭中に何かあったのか?」


食事の手を止めて、桐葉くんが鋭い目をこちらに向ける。


「BSの総長が胡桃に接触してきたんだよ」

「えっ、?!」

「は…?!BSの総長!?おい叶兎、そういう事はちゃんと知らせろ」


飛鳥馬くんも目を見開き、ざわっとした空気が流れる。

天音くんは知っていたみたいだけど、桐葉くんと飛鳥馬くんにはまだ伝わっていなかったらしい。

一方、九条くんは……最初から知っていたかのように落ち着いた顔をしていた。


「…しばらく1人で行動するのは控えた方がいいかもな」


九条くんの低い声に、場の空気が一気に引き締まった。


< 212 / 405 >

この作品をシェア

pagetop