総長は、甘くて危険な吸血鬼
【side叶兎】
「まー明日は1日中俺がそばにいれるから平気だと思うけど…」
「叶兎がそう言うならまぁ…」
…とは言え、今の俺の心配事はそこじゃない。
いや、その件も心配事ではあるし胡桃が狙われてる以上どうにかしないといけないんだけど。
さっき胡桃の血を飲んだ時、自分自身を制御できなくなりそうだった。
ただ“必要な分”だけじゃ足りない、もっと欲しい、と。
今まではこんな感情に振り回されたことなんてなかったのに、胡桃の匂いと味を感じた瞬間、理性の境界線が一気に溶け崩れた気がした。
吸血鬼が生きるために必要な吸血量はほんのわずかだ。
多く吸いすぎれば、人間側はすぐに体調を崩す。だから、普通は最低限に抑えるのが常識。まぁ輸血パックとかカプセルとかは栄養価が違うので変わってくるけど。
もしあの時、二人きりだったら…、この感情を抑えられなかった気がする。
『この料理美味しい!!九条くんってすごいんだね!!』
「秋斗、この見た目で家庭的なのギャップあるよね」
「おい羽雨それ褒めてんのか?」
「褒めてるよ!」
……胡桃の声が場を明るくしてくれる。
みんなで笑っているのに、俺だけ胸の奥がざわついて仕方なかった。
少し……いや、かなり、血を吸うのが怖い。
「……おい、俺は叶兎じゃないぞ」
『んー…?』
「そういうのは叶兎だけにしろ」
『叶兎くん…』
……ん?
と思って反対側の胡桃の隣に座っていた凪の方を見たら、何故か胡桃が凪の肩に寄りかかっていた。