総長は、甘くて危険な吸血鬼


…まさか

と思って胡桃が飲んでいたグラスを手に取ると、明らかにリンゴジュースではなかった。

試しに一口飲んでみると俺の嫌な予感は的中。

甘い果汁じゃなく、アルコール特有の苦み。


「ちょっと、胡桃が飲んでたのお酒なんだけど…」

「え?」
「は?」
「あれ、俺置き間違えた?!」


一応ノンアルコールだから法律的にはアウトではないけど…ノンアルだからと言って絶対に酔わない訳ではない。

テーブルを用意していた秋斗も顔を青ざめて、予想外だったようでわざとではないらしい。

いや、わざとだったら困るけど…!


「あれは…確実に酔ってるね」


春流が苦笑交じりに呟いた。


「ていうか随分お風呂長くない?まさかとは思うけど…」


羽雨のその言葉に、その場にいた全員が視線を合わせる。

いや、女子はお風呂長いだろうし…


「叶兎お前行ってこい」

「えっ俺?」

「他に誰がいるんだよ」


凪に当然のように指名され、返す言葉が詰まる。

万が一のことがあったら困る、
ということで生存確認をしに行くことになったけど

……え?これでお風呂でのぼせてたりとかしたら
中入って運んで来なきゃいけないってこと?

思春期男子には荷が重すぎるミッションを背負わされ、背中にじっとりと汗が滲む。


「間違っても酔った相手に手は出すなよ?」

「……善処します…」


凪にしっかり釘を刺されたところで、観念した俺は広い浴場の入り口で名前を呼んだ。


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