【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『天音くん…っ足速すぎ…っ』
「ここまで来れば平気かな」
やっと足を止めてくれたのは、学園を出た先の路地裏。
狭い通りに停められていた黒い車の後部座席を、天音くんが迷いなく開けた。
「胡桃ちゃん、乗って」
…え?
思わず足が止まった。
逃げると言っても、そこまでする?
『…どこに行くつもりなの?』
「俺たちのアジトだよ、あそこが1番安全だから」
アジト…って、前に夜中バイクで連れて行ってもらったあの建物だよね
……でも、なんだろう。
助けてもらったはずなのに、胸の奥でモヤモヤとした微かな違和感が大きく膨らんでいく。
何かが決定的におかしい気がする。
『…。』
車に乗り込むべきか悩んで立ち尽くしていた、その時。
制服のポケットの中で、ブブブ……と携帯が激しく震えた。
画面を取り出して確認すると、そこには『九条秋斗』の文字。
『九条くん……!』
画面に表示された名前に、心がホッと安らいだ。
思わずすぐに通話ボタンを押そうとした瞬間──。
「おっと、それはダメだよ」
天音くんが、
乱暴に私の携帯を奪った。