【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「出てもいいけど、スピーカーにして」
背後に立ち塞がる朔の冷ややかな低い声に、私は身体を強張らせながら、思わず小さく首を縦に振った。
スマホを震える指で操作し、スピーカーに切り替えて応答ボタンを押す。
「っ胡桃、今どこにいる?!」
通話口から飛び込んできたのは叶兎くんの声。
電話越しだというのに、彼の必死な響きが心臓に直接触れたみたいで、胸の奥が少しだけ軽くなった。
安心できる状況なんて一つもないのに無意識に頬が勝手に緩んでしまう。
…けど、その一瞬の安堵を打ち消すように朔の声が割り込んだ。
「叶兎。詰めが甘かったね」
「は…?お前、朔?何で胡桃の携帯に…」
私が返事をする前に、朔が言葉を被せる。
「君にくーちゃんは渡さない」
「こっちのセリフだ。」
『叶兎くん…』
「胡桃、そこにいるの?!」
返事をしようとしたその瞬間。
右肩に、突き刺さるような鋭い痛みが走った。
『…っ!』
痛みに息を詰まらせ、手にしていた携帯を床へ取り落としてしまった。
カシャン、と硬い床にスマートフォンが叩きつけられる乾いた音が静寂に響いた。
地面に落ちた反動なのか画面が暗転し、叶兎くんとの通話がぷつりと途切れてしまう。
『っ…あ…』
後ろからガッシリと回された強い腕。
首筋から肩にかけてかすかに伝わってくる、熱い吐息。
遅れて理解した。
…血を、吸われてる…。