【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「…何?」
心底面倒そうな声音で、ドアの向こうに投げかける。
「幹部、みんな集まってるからそろそろ会議始めたいんだけど」
「悪いけどそれ後にしてくんない?」
「お前が大至急で収集したんだろ。後でいいのか?」
「……あーー。わかった、もう行く」
ドア越しに聞こえた声の主は、たぶんさっきまでここにいた副総長の蓮水さんだ。
たまたまのタイミングだったと思うけど……本当に助かった。
朔は私を拘束していた手をゆっくりと離すと、鬱陶しそうにドアの方へ歩き出す。
「あぁそうだ」
部屋を出て行く直前、振り返った朔が意味深に口元を歪めて笑った。
「まさか逃げるなんてこと考えてないと思うけど、あいつに会いたいならここにいたほうが会えると思うよ。」
『え、?それ、どういう…!』
私は呼び止めようと声をかけるけど、また私のことなんかお構いなしにそのまま部屋を出て言ってしまった。
パタン、と静まり返る部屋。
あいつって、誰。
……叶兎くんのこと…?
ここにいた方が会えるってどういうこと?
まさか、叶兎くんの身にも何かあったんじゃ…。
でも、叶兎くんは他の吸血鬼と比べても相当強いはずだ。
相手が大勢だったとしても、きっとそんな簡単に倒れたりしない。