総長は、甘くて危険な吸血鬼


…とにかく、今は朔がいなくなった今は逃げる絶好のチャンスだ

会議中ってことは見張も少ない可能性がある。


恐る恐るドアノブを回すと…拍子抜けするほど簡単に扉が開いた。



外に出ても、誰もいない。
……警備が緩すぎる。



それとも、私に逃げ出す勇気なんてないと舐めているのか。
昔の私なら確かにそうだったかもしれない。

でも…今の私は違う。


足音を忍ばせながら廊下を走り抜け、出口を探して角を曲がった。


その瞬間。


ガンッ!


「痛っ…おいてめぇ気をつけ──」


勢いよく誰かと正面衝突してしまった。

頭を抱えながら顔を上げると、目の前にはよく知っている人物。

互いに目が合った途端、相手は気まずそうに視線を逸らす。


「あー…」


何か言いたげに言葉を探しているようだったけど、曲がり角の向こうから誰かが歩いてくる話し声が聞こえてきて、私の腕を引っ張り目の前の部屋に逃げ込んだ。


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