【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
…とにかく、今は朔がいなくなった今は逃げる絶好のチャンスだ。
会議中ということは、廊下の見張りや警備も手薄になっている可能性がある。
胸の鼓動がうるさいくらい高鳴るのを感じながら、恐る恐るドアノブへ手を伸ばして静かに回すと……拍子抜けするほどあっけなく扉が開いた。
外に出ても、誰もいない。
……警備が緩すぎる。
それとも、私に逃げ出す勇気なんてないと舐めているのか。
昔の私なら確かにそうだったかもしれない。
でも…今の私は違う。
足音を忍ばせながら廊下を走り抜け、出口を探して角を曲がった。
その瞬間。
ガンッ!
『っ…』
「痛っ…おいてめぇ気をつけ──」
勢い余って、曲がり角から現れた誰かと正面衝突してしまった。
痛むおでこを押さえながら恐る恐る顔を上げると、目の前にいたのはあまりにもよく知っている人物。
お互いにバチッと目が合った途端、相手は気まずそうにさっと視線を横へ逸らした。
「あー…」
気まずそうに頭を掻き、何か言いたげに言葉を探しているようだった。
そうしているうちに、曲がり角の向こうからザッザッという複数の足音と、誰かが歩いてくる話し声が近づいてくる。
とっさに腕を強く引っ張られて、すぐ目の前にあった部屋の扉を開け、私を中へと押し込んで一緒に滑り込んだ。