【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
……ヤバい、バレた、どうしよう。
何か言い訳はないかと脳をフル回転させるけど何も思いつかない。
でもこれで朔のところに戻ったら今度は何されるか分からない…!
「胡桃?」
ていうかこの人誰…!
さっきから私のこと呼び捨てしてくるこの人。
茶色の長い前髪が目元までかかっていて顔がよく見えないけど、着ているのは黒の特攻服に水色の鮮やかな刺繍。
見たところ完全にBSの人間みたいだけど……。
『…私に、何か…?』
「何かって、逃げるんだろ?」
『…そう見えます?』
言い訳が苦しすぎる。
というかもはや言い訳にすらなってない。
「あ、そういうことか」
いや、どういうこと。
その人はポケットから携帯を取り出し、すぐに画面をこちらに向けてきた。
その画面に表示されていたのは“九条秋斗”の文字。
よく見ると、数時間前の私との通話履歴も表示されている。
この意味を理解するのに数秒かかった。
でも目の前にいるのはBSの服を着た知らない男…。