総長は、甘くて危険な吸血鬼
「…は?なんでお前がいんの?」
どこか聞き覚えのある声が部屋の中に入ってきた。
でも私、BSの人に知り合いなんていたっけ…?
私はソファの影に身を小さく潜めて、呼吸音すら漏らさないよう必死に堪えているので姿は見えない。
この声の主が誰なのか、思い出そうとするほど記憶が靄に覆われていく。
「いや、それこっちのセリフなんだけど」
天音くんの声が応じた。驚きと苛立ちが入り混じった声色。
隠れていても彼が眉をひそめている様子が容易に想像できた。
「…部屋間違えたか…?いや、でもGPSはここ指してるし…」
「え、まさかあの後そのまま追いかけてきたわけ?お前手強いから強いやつ回したのに」
「胡桃はどこにいる」
えっ…私…!?
思わず心臓がどきりと跳ねる。
「…はぁ。胡桃チャンならそこだよ」
天音くん!?!?!?
思わず声が漏れそうになった。
さっき、味方みたいなこと言ってたけどやっぱり嘘だったの…?!
段々と近づいてくる足音に、心臓の鼓動が速くなる。
「見つけた」
そっと覗き込む影。
私はソファの背に押し付けられるようにして座り込み、呼吸を忘れて見上げた。