総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


じゃあ天音くんが私たちを裏切ったのは、自分の意志じゃなくて…選べなかったから。家族を守るために、そうするしかなかったからなんだ。


頭の中で、今までの出来事がつながっていく。

BSのアジトで私を敵から隠してくれた時も、彼は「今は指示されてないから」って曖昧に笑っていた。
あれは…私たちを思っての精一杯の抵抗だったんじゃないか。

胸の奥がきゅっと締めつけられる。


「で、最初の話に戻るけど。」


蓮水さんはあえて軽い調子を装いながら言った。


「俺は明日BSを壊す、そこにあの子達がいるのは危険だから預かって欲しい。んで、その混乱に紛れて朔と接触して欲しいって事なんだけど。赤羽もいい加減朔と決着つけたいだろ?」

「…。」


決着、その言葉に叶兎くんは口を噤んだ。

どちらにせよBSとはいつか決着を付けなければいけないのだろう。

蓮水さんの幻覚の能力は正面から敵として来られると厄介だし、組織が混乱している時なら攻め入る絶好のチャンスではある。


「壊すって、お前は何するつもりなの?」

「んまあ、物理的に?協力してくれるなら教えてあげるよ」


なんか胡散臭い…

他のみんなの方を見渡しても、うーん、と頭を抱えて蓮水さんの事をまだ信じていない様子だ。


「じゃあ、言い方を変える。」


蓮水さんの声が、ふっと低くなった。


「…天音は弱みを握られてたからあんたらを裏切った。それを聞いて、まだ仲間だと思えるんなら、取り戻したいって思わねぇ?」


あいつ、自分からは絶対帰ってこねーよ。
とぼそっと呟いた蓮水さんの発言に、更に空気が張りつめた。


「俺、敵にも嘘はつかねぇ主義だから」


長い沈黙の末、叶兎くんは軽く息を吐いた。



< 301 / 405 >

この作品をシェア

pagetop