【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


『天音くんの、家族…?』

「お兄ちゃんのこと知ってるの?」



長女の亜美ちゃんが、興味津々に尋ねてきた。


知ってるも何も、同じ屋根の下で過ごしてきた。

けど今この場で、それを正直に伝えていいのか迷ってしまう。



『えっと…同じ学校に通ってる、お友達だよ!』



私が精一杯の笑顔を作ってそう答えると、子供たちは「そっかぁ!」と安心したように可愛らしく笑った。

その屈託のない笑顔を見ていると、胸の奥がキュッと痛む。



「今日はこの件もお願いしたくて来たんだけど、この子達のこと、ここでしばらく預かって貰えねぇか?」



唐突に放たれた蓮水さんの言葉に、場の空気がピタリと止まる。



「…え、何で?さっきから話の流れが全く分かんないんだけど」



叶兎くんが怪訝そうに眉をひそめる。


当然だ。

肝心の当事者である天音くんはここにいないし、目の前にいるのはまだ幼い子供達。


いくら「預かってくれ」と言われても、すぐに頷ける話ではなかった。

蓮水さんは少し考えてから、子供たちに向かって柔らかく声を掛ける。



「ごめんね、お兄さん達少し難しいお話するから、またあっちで待っててくれる?」

「はーい」



素直な返事とともに亜美ちゃんたちは手を振って部屋の隅へ戻っていった。

その背中が見えなくなるのを待ってから、蓮水さんは低い声で切り出した。



「詳しい事情は、本当は本人が話すべきだと思うから深入りはしねぇけど……天音はな、朔にあの子たちを人質に取られてたんだよ。だから、あんたらを裏切るしか手がなかったんだ」

「…人質?」



桐葉くんが眉を寄せる。声にわずかな棘が混じった。



「傍から見たら、天音も朔には良くしてもらってたから、最初はそんな物騒な雰囲気じゃなかったんだけどな。朔が狂い始めてからは……あの子たちを平気で脅しの材料に使うようになった」



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