総長は、甘くて危険な吸血鬼
合図を経て裏口へ向かい、
重い扉を静かに押し開けた。
しばらく先へ進むと、
「……誰だ?」
薄暗い廊下の奥から複数の男が現れた
鋭い眼光が私達を射抜く。
「ちっ…」
相手が声を上げるよりも早く、叶兎くんが背後に回り込み容赦なく拳を振り下ろした。
鈍い音と共に男が壁に叩きつけられる。
…でも、その目はどこか虚ろに見えて
「…あいつの能力か」
恐らく、この人達も朔の能力の影響を受けているのだろう。
男はおぼつかない足取りで再び立ち上がり、無防備にも突っ込んでくる。
その中の1人の男が突然軌道を変えて私の方に向かってきて思わず後ずさった。
『……っ!』
「胡桃っ!」
自分の身は、自分で守らなきゃ…!
相手が1人なら受け止められる。お父さんに叩き込まれた護身術を思い出し、構えをとった。
男の拳が迫ったその瞬間、
私の身体を中心に、空気が震えるような波動が走った。
「?!…」
目の前の男は動きを止め、力を失ったようにその場に崩れ落ちる。
ゆっくりと見上げた男の瞳には、さっきまでは無かった光が差していた。
「俺達……何を…?」
周りに乱闘していた男達も動きを止め、正気に戻っていく。