総長は、甘くて危険な吸血鬼
敵の攻撃をかわしながらアジトの奥へと進み、中央の大きな階段を登った。
飛鳥馬くんが目を閉じて集中し、空気の流れを読む。
「……うん。間違いない。この先の扉の向こうに天音がいる」
「まずは…天音を突破しなきゃならないな」
桐葉くんのその言葉に、九条くんがため息をつきながらも口元を引き締めた。
「……めんどくさ。」
吐き出した言葉とは裏腹に、その声音は冷たさよりも“仕方ないな”という諦めと、相手を思いやる色が滲んでいる。
「心配してるくせに」
春流くんに指摘され、むっと睨み返す九条くんだけど、否定はしなかった。
その表情には、かつて仲間として過ごした時間の重みが刻まれているようで。
「……天音をWhite Lillyに誘ったのは俺だ。だから最後まで責任は取る。あいつが心からここに戻って来たいと思うなら…俺は受け入れる」
叶兎くんは扉の前に立ち、自分に言い聞かせるように言った。
深呼吸をし覚悟を決め、重い扉を開く。
その瞬間部屋の奥から足音が近づき…現れたのは、冷ややかな眼差しをした天音だった。
薄暗い部屋の中央に無造作に立ち、その表情はどこか影を帯びている。
「……何しに来た」
瞳は一切笑っておらず、私達が視界に入るや否や重苦しい空気の中小さく言葉を吐いた。