【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



正気を取り戻して崩れ落ちる敵の男たちをかわしながら、私たちはさらにアジトの深部へと進み、中央にある巨大な螺旋階段を駆け上がった。

階段を上りきった3階の踊り場で、飛鳥馬くんが静かに目を閉じて集中し、空気の微細な揺れから中の様子を読む。



「……うん。間違いない。この先の扉の向こうに天音がいる」

「まずは…天音を突破しなきゃならないな」



桐葉くんのその言葉に、九条くんがため息をつきながらも口元を引き締めた。



「……めんどくさ。」



吐き出した言葉とは裏腹に、その声音は冷たさよりも“仕方ないな”という諦めと、相手を思いやる色が滲んでいる。



「心配してるくせに」



春流くんに指摘され、むっと睨み返す九条くんだけど、否定はしなかった。

その表情には、かつて仲間として過ごした時間の重みが刻まれているようで。



「……天音をWhite Lillyに誘ったのは俺だ。だから最後まで責任は取る。あいつが心からここに戻って来たいと思うなら…俺は受け入れる」



叶兎くんは閉ざされた扉の前に立ち、自分自身に強く言い聞かせるように言葉を放った。

全員が深く深呼吸をして覚悟を決め、叶兎くんがその重い扉を勢いよく押し開ける。


中に入ると静まり返った広大な部屋の奥から、規則的な足音が近づいてきて……。

暗闇の中から現れたのは、凍りつくような冷ややかな眼差しをした天音くんだった。



薄暗い部屋の中央に無造作に立ち、その表情はどこか影を帯びている。



「……何しに来たの」



瞳は一切笑っておらず、私達が視界に入るや否や重苦しい空気の中小さく言葉を吐き捨てる。




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