総長は、甘くて危険な吸血鬼


見慣れない黒色の特攻服、その腕にはBLACKSKYの刺繍。

鮮やかな青い文字が、残酷な現実を突きつけてきた。

…本当に、敵の側に行ってしまったんだと。


「お前を、連れ戻しに来た」


叶兎くんが一歩前に出る。
真っ直ぐな声が、空気を張りつめさせた。


「そんな事頼んでない」


淡々と言葉を返す天音くんだけど、叶兎くんの言葉に一瞬瞳が揺らいだのを私は見逃さなかった。


「お前の家族は俺達のアジトで厳重に匿ってる。もうここにいる必要はない」

「……勝手な事を…」


天音は肩をすくめて、まだ何か言いたげな口を閉じた。

一拍置いて、顔を上げる。


「そもそも、俺裏切ったよね?こんな奴を連れ戻してどうすんの?罪を償わせたいの?」


まるで自分自身を嘲笑うかのように軽く言った天音くん。


確かに、天音くんは一度White Lillyを裏切った。

でもそれには事情があって、そうするしかなかったからだ

ここにいるみんなは、罪を償わせようなんて全く思っていない。


「誤魔化してんじゃねぇよ。…お前さ、本心を悟られたくない時、無理して口角上げようとする癖あるよね」

「…」


叶兎くんにそう指摘され、図星だったのか
何も言い返せず口角がすとんと落ちた。


「天音。お前が本気で戻って来たいって思うなら、今の天音も俺達は受け入れる」

「…やめろよ」


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