【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
見慣れない黒色の特攻服、その腕にはBLACKSKYの刺繍。
鮮やかな青い文字が、残酷な現実を突きつけてきた。
…本当に、敵の側に行ってしまったんだと。
「お前を、連れ戻しに来た」
叶兎くんが一歩前に出る。
真っ直ぐな声が、空気を張りつめさせた。
「…そんな事、頼んでないけど。」
淡々と言葉を返す天音くんだけど、叶兎くんの言葉に一瞬瞳が揺らいだのを私は見逃さなかった。
「お前の家族は俺達のアジトで厳重に匿ってる。もうここにいる必要はない」
「……勝手な事を…」
天音くんは呆れたように肩をすくめると、溢れ出そうになる感情を殺すように固く口を閉ざした。
そして一拍置いてから、冷めた顔で視線を上げてくる。
「そもそも、俺、お前らを裏切ったんだよ?こんな奴を連れ戻してどうすんの?罪を償わせたいの?」
まるで自分自身の存在を自虐的に笑うかのように、軽薄な態度をとってみせる天音くん。
確かに、天音くんは一度White Lillyを裏切った。
でも、それには事情があって、大切な家族を守るためにそうするしかなかっただけで。
ここにいる生徒会のみんなの中で、天音くんに罪を償わせようなんて思っている人なんて、誰一人として存在しないのに。
「誤魔化してんじゃねぇよ。…お前さ、本心を悟られたくない時、無理して口角上げようとする癖あるよね」
「…」
叶兎くんにズバリと図星を突かれ、天音くんは何も言い返せないまま、引きつっていた口角をすとんと落とした。
「天音。お前が本気で戻って来たいって思うなら……今の天音も俺達は受け入れる」
「…やめろよ」