総長は、甘くて危険な吸血鬼
突然鳴り響いた音に釣られ反射的に振り返ると、そこにはBSの構成員達。
私達の姿を見つけるや否や怒号とともに一気に襲い掛かってきて、場の空気が一気に戦場へと変わった。
叶兎くんが私の前に立って守ってくれているけど、
…さっきみたいに私の力で止められるかな
その矢先、突然後ろから腕をひっぱられて驚いて顔を上げると、至近距離に迫った瞳があった。
ほんの一瞬
混戦の波から取り残されたかのように、私と天音くんだけがこの部屋の中でぽっかり孤立する。
「……胡桃ちゃん」
吐息にかすれるような声。
私にだけ届く小ささで、名前を呼んだ。
「俺は戻らない。…けどあいつらとは戦いたくない。みんなを連れて帰って」
…まただ。
天音くんは時々、
そうやって何かを押し殺すように言葉を吐く。
『いつも何をそんなに悩んでるの…?何か事情があるなら、きっとみんな協力してくれ──』
「俺個人の問題に首突っ込んでくんなって前に言ったよね?対して知りもしないくせに何で俺に干渉してくるの?」
何をそんなに焦ってるの、何を悩んでるの
知りもしないって言うけどそりゃ、教えてくれなきゃ理解もできないよ。
あの時は、確かに天音くんの事情に踏み込まない選択をした。
でも今のままじゃ話がずっと一方通行で進まないままだ。
『だって天音くんずっと辛そうな顔してる。』
「……そうやって誰にでも優しくするのやめろよ。」
拒絶の言葉。だけど、瞳の奥に滲むのは怒りではなく戸惑いだった。