【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



突然鳴り響いた音に釣られ反射的に振り返ると、そこにはBSの構成員達。

私達の姿を見つけるや否や怒号とともに一気に襲い掛かってきて、場の空気が一気に戦場へと変わっていく。



叶兎くんが素早く私の前に立ちはだかり、盾になるようにして守ってくれたけど……頼もしい背中を見つめながら、私は胸元の指輪を強く握りしめた。


……さっきみたいに、私の『純混血』の力で、この人たちも止められるかな……。



そう思って一歩踏み出そうとした瞬間──突然、後ろから腕を力強く引っ張られた。



勢い余ってよろめき、驚いて顔を上げると…目の前ギリギリの至近距離に、天音くんの瞳があった。


ほんの一瞬。

激しい混戦の波からぽっかりと取り残されたかのように、私と天音くんだけがこの乱闘の中で孤立した空間を作り出していた。


男たちの怒号も、拳が交差する音も、すべてが遠くの出来事みたいに遠のいていく。



「……胡桃ちゃん」



周りの喧騒にき消されてしまいそうなほど小さく、私だけに届く声で、天音くんが耳元で私の名前を呼んだ。



「俺は戻らない。…けどあいつらとは戦いたくない。……頼むから、みんなを連れて今すぐ帰って」



…まただ…


胸の奥がキュッと締め付けられる。

天音くんは時々、そうやって自分の本当の感情を押し殺すようにして、冷たい言葉を吐く。



『…天音くん。いつも、何をそんなに悩んでるの…?何か事情があるなら、話して欲しいよ。きっとみんな、協力してくれ──』

「俺個人の問題に首突っ込んでくんなって、前に言ったよね?対して知りもしないくせに…何で俺に干渉してくるの?」



何をそんなに焦ってるの、何を悩んでるの。

知りもしないって言うけどそりゃ、教えてくれなきゃ理解も出来るわけがない。


あの時は、確かに天音くんの事情に踏み込まない選択をした。

でも、今のままじゃ話はずっと平行線のままで、何の解決にも進まない。



『だって……天音くん、ずっと辛そうな顔してる。』

「……っ、そうやって、誰にでも優しくするの…マジでやめろよ。」



拒絶の言葉。

だけど、瞳の奥に滲むのは怒りではなく戸惑いだった。




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