総長は、甘くて危険な吸血鬼




『誰にでもじゃない、天音くんだからだよ。家族想いで、仲間想いな天音くんの事なら、私も知ってる。』



確かに天音くんにされた事を考えれば思うところはある。

…けど、それ以上に

今ここで天音くんを連れ戻さなかったら、もう二度と戻って来てくれない気がして。


このまま放っておいたら、
あの時みたいな笑顔は完全に消えてしまうんじゃないか
朔みたいに人が変わってしまうんじゃないか

そう思ったら、無視はできなかった。



『White Lillyのみんなといる時の天音くんはほんとに楽しそうだった。…今まで見て来た天音くんのことを、私は信じてる。もし協力できることがあったらちゃんと言って欲しい』


「……なんだよそれ。」



天音くんの瞳が、僅かに揺らぐ。



「じゃあ何、俺と付き合ってって言ったらどうすんの?」



……………え?

その唐突な言葉に、世界が一瞬静まり返った。
戦闘の喧騒が遠のき、天音くんの声だけが耳に入る。

いつもの冗談かと思ったけど、いつにも増して真剣な眼差しが真っ直ぐ私の中に響いた。



「俺、胡桃ちゃんの事好きなんだよね」



心臓を殴られたみたいに胸が強く跳ねて
何も答えられず、息を飲む。




< 313 / 405 >

この作品をシェア

pagetop