【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




『誰にでもじゃない、天音くんだからだよ!…家族想いで、仲間想いな、天音くんの事なら、私だって知ってる…!』



確かに、天音くんに裏切られて攫われたことを考えれば、思うところがないわけじゃない。


……だけど、それ以上に。


今ここで天音くんの手を掴んで連れ戻さなかったら……もう二度と、手の届かないところへ行っちゃう気がする……!


このまま一人で放っておいたら、生徒会室で見せてくれていたあの柔らかい笑顔は完全に消えてしまうんじゃないか。

朔みたいに、心が壊れて人が変わってしまうんじゃないか。


そう思ったら、絶対に無視なんてできなかった。



『White Lillyのみんなといる時の天音くんは本当に楽しそうだった。…今まで見て来た天音くんのことを、私は信じてる。もし協力できることがあるなら…お願いだから、ちゃんと言って欲しい』



まっすぐな私の言葉に、天音くんの瞳がわずかに揺らぎ、見開かれた。



「……なんだよ、それ……」



自嘲気味に呟いた天音くんは、私を困惑させるように視線を絡めてくる。



「……じゃあ何?俺と付き合ってって言ったら、胡桃ちゃんはどうすんの?」




……………え?



その唐突な言葉に、世界が一瞬静まり返った。



戦闘の喧騒が遠のき、天音くんの声だけが耳に入る。



…え?付き合……え……!?


いつもの軽口や意地悪な冗談かと思った。

けれど、いつにも増して真剣な強い眼差しが、まっすぐに私の心の中へと突き刺さってくる。



「俺、胡桃ちゃんの事好きなんだよね」



心臓を殴られたみたいに胸が強く跳ねて。

何も答えられず、息を飲む。




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