【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
返事をする猶予すら与えず、天音くんはすっと視線を逸らした。
そして、苦そうに自嘲の笑みを浮かべて吐き捨てる。
「…ほら、答えられない」
わざと軽く鼻で笑ってみせるけど、そこには冗談めいた明るさなんて一欠片もなかった。
…いや、でも、だって……今はそういう話をしているのではない。
突然そんな事言われて、答えられるわけないじゃん…!?
「俺がどんな気持ちでいたかなんて全然知らないでしょ?だから無責任に踏み込んで来んなよ」
強がるように放たれたその声は刃のように鋭いのに、どこか脆く震えていて。
胸の奥にしまいこんでいた本当の痛みが言葉の端々から零れてしまっているのがわかる。
返す言葉を探そうとしても、どうすればいいのかわからない。
喉の奥で声がつかえて何も言えなかった。
──その沈黙を破ったのは、鋭い声だった。
「…おい」
振り返ると、叶兎くんが私の肩を強引に自分の方へ抱き寄せた。
私を庇う強い力とともに、射抜くような鋭い視線で天音くんを凝視している。
ふと周りを見回すと、さっきまで暴れていたBSの構成員たちは、いつの間にか全員気絶して床に転がっていた。
部屋の空気が一気に張り詰め、静まり返る。
「天音、もういいだろ」
叶兎くんが、落ち着いた声で言った。
「本音を言え。俺達を頼れよ」