総長は、甘くて危険な吸血鬼
思わず見上げると、そこに居たのは俺と同じぐらいの背丈の男の子。
やけに整ったその容姿に、すぐに吸血鬼だと察した。
……この人、強い。
恐らく俺の魅了が効かない相手だ。
向けられた視線は、俺の惨めさも浅ましさも全部見透かしていて、腹立たしいほど冷静だった。
「…何。」
「君、このままじゃ潰れるよ」
…は?
…そんな事、自分が1番分かっている。体が悲鳴を上げ始めていて、このままじゃ持たない事は察していた。
でも、何も知らない人に口を出される筋合いは無い。
「何、じゃあお前が金でもくれんの?」
どうせ口だけで、俺に何か与えてくれるわけでも無い。
だからもうさっさと目の前から消えて欲しかった。
「天音くん」
「名前、何で知って…」
「僕も裏の人間だからさ。君の話、噂で聞いた。」
こいつも闇の中で生きてるっていうのか…?
俺と同じぐらいの歳の子が、俺と同じように。
…でも、その目には疲弊も絶望も何も感じられなかった。身なりも整ってるし、俺なんかよりまともに暮らしてるんだろう。
「僕と一緒に来ない?」
目の前に差し出された手。
予想外の言葉に、胸がざわついた。