総長は、甘くて危険な吸血鬼
「君の能力、こんなところで潰れるには勿体なすぎる。」
結局、こいつも俺の能力目当てか。
…けど、今までは仕事を紹介してくれるだけで、一緒に来て欲しいと言われた事はなかった。みんな俺の能力を恐れて、仲間に入れるなんて事は絶対にしないから。
「この手を取ってくれたら、住む場所も食事も全部提供してあげる。妹と弟も一緒にね」
…!!
そんな美味しい話ある訳ない。
そう、今までの人生が物語っていた。
そもそも何で俺の弟と妹の事まで知っているのか。
何か罠かもしれない、騙されているのかもしれない。
でもこの気を逃したらきっとこんな事は二度とない。
妹と弟までも養ってくれるというその言葉が、俺の瞳を揺らした。
もう、考える事さえも面倒だった。
だから…その手を取った。
「…良かった。君は今日から僕達の家族だよ」
そう言って、朔は笑った。
相手が何を企んでいるのかは知らない。
ただ、生きる為にこの選択をしたんだ。