【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


「君の能力、こんなところで潰れるには勿体なすぎる。」



結局、こいつも俺の能力目当てか。


内心で自嘲の笑みが漏れる。


……けれど。

今までの大人たちは、俺に危険な仕事を斡旋して使い捨てるだけで、「一緒に来ないか」なんて手を差し伸べてくれた奴は一人もいなかった。


みんな俺の『魅了』の力を心の底では恐れていたから、自分の身内や仲間に入れるなんて真似は絶対にしようとしなかったからだ。

そんな俺の疑心暗鬼な視線を感じ取ったのか、朔はさらに甘い言葉を重ねてくる。



「この手を取ってくれたら、住む場所も食事も全部提供してあげる。…君の大切な妹と弟も一緒にね」



…!!


…そんな美味しい話、ある訳ない。

そう、今までの人生が物語っていた。


そもそも何で俺の弟と妹の事まで知っているのか。

何か罠かもしれない、騙されているのかもしれない。



でも、この気を逃したらきっとこんな事は二度とない。



妹と弟までも養ってくれるというその言葉が、俺の瞳を揺らした。

もう、考える事さえも面倒だった。



だから…その手を取った。



「…良かった。君は今日から、僕達の家族だよ」



そう言って、朔は笑った。


俺の手を握り返すと、朔は天使のように柔らかく微笑んだ。

相手が裏で何を企んでいるのかなんて、どうでもよかった。


ただ俺は……妹たちと共に生き残るために、この運命を選択したのだ。



< 321 / 406 >

この作品をシェア

pagetop