総長は、甘くて危険な吸血鬼
朔に拾われ、
俺はBLACKSKYの一員となった。
新入りながら副総長の右腕という地位まで与えられ、当然最初は反感も買った。
だが、俺の力を見せれば認めざるを得なかったのだろう。
いつの間にか、みんなが俺を受け入れていた。
……ここでの生活は、確かに安定していたと思う。
アジトはただの不良の集いとは思えないほど広く、生活できる部屋まで用意してくれて、言葉通りに妹と弟の事もここで面倒を見てくれた。
一体どこから湧いてくるお金なのか…それは尋ねてはいけない気がして、考えることを辞めた。
けど俺の心はちっとも安定しないまま。
生活に困らなくなっても過去の手の汚れが消えるわけじゃないし、ここで暮らす限り、俺は能力を使って貢献しなければならなかった。
役に立たなければ、きっと捨てられる。
もうあの生活に戻るのは御免だ。
でも、仲間の中にいてもどこか独りで。
そんな俺に、ある時朔が言った。
「…気分転換に、学校にでも行ってみたら?きっと、気持ちを整理する時間が必要なんだ。金なら僕が出す」
今更学校だなんて、面倒くさい。
行ったところで何かが変わるわけでもないし、必要だとも思えなかった。
…でも、
「天音」
栗栖天音という名を捨て、偽名で呼んで欲しいと頼んでいるのに朔だけはいつもそう呼んでくる。
何でこんなに良くしてくれるのか分からなかったけど、
朔だけは、
俺の存在をちゃんと見てくれていた気がした。
俺は一言も了承していなかったけど、朔が勝手に願書を出したので、強制的に試験を受けることになった。
…ま、今までまともに勉強してなかったし、落ちるでしょ。
そう思って望んだ試験。
なのに、何故か余裕で合格してしまった。吸血鬼は生まれつき頭脳も優れているからだ。
そうして俺は、白星学園へ入学する事になる。