【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
……入学したのはいいものの、特に俺の日常で何かが変わるわけでもなかった。
成長とともに少しずつ能力を抑えられるようにはなったけど、まだ気を抜けばすぐに周りの人間を無意識に魅了してしまう。
四六時中ずっと気を張った状態でいなきゃいけないなら、友達なんて面倒なものを作る気にもなれなくて。
当時の俺は目つきも鋭く、クラスメイトが気安く話しかけてきても、冷たい言葉で突き放してばかりいた。
結果、誰も俺に関わろうとはしなくなった。
「ねぇ、なんでそんなに露骨に人避けてんの?」
それでも…たった一人だけ、しつこく俺に声をかけてくる物好きな奴がいた。
「…お前に関係ねぇだろ。消えろよ」
「あるけど。隣の席だし」
無視しても、冷たく突き放しても、次の日にはまた話しかけてくる隣の席の男、赤羽叶兎。
何度も何度も諦めずに、毎日くだらない話を聞かされる。
正直鬱陶しかった。
俺の事なんか放っておけばいいのに。
「…あーもう、ほっとけよ!!俺に構うんじゃねぇ!」
一向に諦める気配がないその男に嫌気が差して、顔を上げ、ついに声を荒らげた。
顔を正面から真っ直ぐ見たのはこれが初めてだったと思う。
ルビーみたいに深い赤色の瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
何で今まで気づかなかったんだろうってぐらい、目を奪われる程綺麗な顔立ちで。
その圧倒的な存在感は……朔と初めて出会ったあの夜の感覚と、すごくよく似ていた。