総長は、甘くて危険な吸血鬼
入学したはいいものの、特に何かが変わるわけでもなかった。
ある程度能力を抑えられるようにはなったけど、まだ気を抜いたらすぐに相手を魅了してしまうし、ずっと気を張った状態でいないといけないなら友達を作るのも面倒で。
当時の俺は目つきも鋭く、クラスメイトが話しかけても冷たく返すばかり。
結果、誰も俺に関わろうとはしなかった。
「ねぇ、なんでそんなに人避けてんの?」
それでも、1人だけ俺に声を掛けてくる奴がいた。
「…お前に関係ねぇだろ」
「あるけど。隣の席だし」
無視しても、冷たく突き放しても、次の日にはまた話しかけてくる隣の席の男、赤羽叶兎。
何度も何度も諦めずに、毎日くだらない話を聞かされる。
正直鬱陶しかった。
俺の事なんか放っておけばいいのに。
「…あーもう、ほっとけよ!!俺に構うんじゃねぇ!」
一向に諦める気配がないその男に嫌気が差して、顔を上げ、ついに声を荒らげた。
顔を正面から真っ直ぐ見たのはこれが初めてだったと思う。
ルビーみたいに深い赤色の瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
何で今まで気づかなかったんだろうってぐらい、目を奪われる程綺麗な顔立ちで。
朔と出会った時と、よく似ていた。