総長は、甘くて危険な吸血鬼

相変わらず上から目線で一々鼻につくけど、
叶兎にそう言われるのは不思議と不快じゃなかった。


「だから俺は、お前が欲しい。能力とかじゃなくて、栗栖天音ってやつが」


言葉を返せなかった。

今まで誰にも、そんなふうに言われたことなんてなかったから。


「……後悔しても、しらねぇよ」




俺が生徒会に入ったのは、気まぐれだった。

何度も勧誘されるのは鬱陶しいし、叶兎なら俺の魅了にかかることもないから気を張っている必要もない。

だから、少しぐらいは張り詰めていた心を緩めてもいいと思った。


まともに生徒会の仕事をする気なんて毛頭なかったけど。


この時期に、俺と同じように春流と凪も叶兎に勧誘されて生徒会に入ってきた。

設立当初の生徒会は俺達4人で、全員吸血鬼。


俺の魅了が効かない血筋の強い3人だから、力なんて関係なく接してくれて。
喧嘩ばかりしてる俺を叱って、笑って、一緒にいてくれた。

だからこそ、俺自身を見て受け入れてくれるあいつらに…いつしか心を許していた。




生徒会で活動し始めて数週間。

ある日、叶兎は唐突に口を開いた。


「俺、不良集めてチーム作ったんだけど」

「「……は?」」


全く脈絡のない発言に、俺と凪は声を揃えて顔をしかめた。

そんな俺達の反応もお構い無しに、叶兎はいつもの調子で言葉を続ける。


「生徒会って肩書きだけだと限界があると思ってたんだよねー。あと俺、色々あってこの街の治安向上させる事も頼まれてんの。その1つがこの学園ってだけでメインはそっち」


街とか学園の事任されるって、いや、叶兎って何者?

お前、誰に何を任されてんの。


「で、生徒会とくっつけちゃえばいいんじゃないかって。この方がずっと動きやすい」


…いやいやいや、おかしいでしょ。

冗談みたいに軽く言うけど、言ってることはめちゃくちゃだ。

けど…意外にも、春流が真っ先に食いついた。


「へえいいじゃん、なんか面白そう!どうせ不良相手するんだったら派手にやった方が楽しいしね」


凪も、ため息をつきつつも頷いた。


「……まぁ確かに、生徒会の看板じゃ効力は弱い。チームの名を掲げれば、不良共は確実に怯むだろうな」

「だろ?」


叶兎は得意げに口角を上げた。

ふざけた調子に見えて、その奥にあるものは本気で
いつだって、自分のやるべきことを本気で信じてる。


ていうか、何で二人共賛成派なの。

順応はや過ぎない?

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