総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「くーちゃん、僕の目を見て?僕が幸せにしてあげるから…」
頬にかかった吐息が、熱い。
『や、めて……!』
思わず顔をそむけ、胸元で朔の肩を押し返す。
だがその動きが止まった瞬間、朔の視線が私の首元へ落ちた。
そこにあるのは…淡い光を帯びた契約の指輪のネックレス。
「……これ……まさか…」
呆然とした声が零れ落ちた。
契約の存在を知られた。
良い方へ転ぶか、それとも最悪の方へ転ぶのか…。
「そっか…はは…契約したんだ…」
笑い声は震え、やがて狂気に染まっていく。
『…朔、私は──』
「この際、契約済みでもいいや。くーちゃんさえ手に入れば」
…まずい、想定外。
契約済みって分かったら私に興味なんてなくなると思ってた。
無効化の力は全然発動しないし、打つ手がない。
「…それに、契約なんて破棄させればいい」
『破棄…って…』
この契約は、どちらかが死ぬまで消えない契約だ。
そんな簡単に…。
………え、
考えられるのは、一つ。
…嫌な予感がする。
『朔、まさか…』
カチリ、と聞こえた乾いた金属音。
朔が懐から取り出したのは……黒光りする拳銃。
その無機質な光に、背筋が凍りついた。
これは、1番最悪な方向だ。
『朔?!いくらなんでもそれはダメだよ!!!』
何でそんなもの持ってるの?!
必死に手首を掴んで止めようとするが、微動だにしない。
まさか、こんなところまで来てしまったのか。能力に呑まれ、理性を手放した朔の姿に胸が締め付けられる。
どんなに呼びかけても、止まってくれない。