【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




「ふふ、あははっ!君は大人しくしてくれればいいの。そしたら何もしないから、ね?」


…本気だ。

これはもう、ただの脅しじゃない。



朔を止めなきゃ。

こんなことしたら、本当に朔が朔じゃなくなっちゃう。



銃口が自分に向けられていないことだけは分かる。

…朔が狙うのは、叶兎くんだ。



『こんなことしたら、ほんとに悪人になっちゃうよ…!!私、朔にこんなことして欲しくない!!』



震える声で必死に叫ぶ。

けれど返ってきたのは、底の見えない歪んだ笑みだった。



「大人しくしててよ。」



次の瞬間、背中が乱暴に壁へ押しつけられる。

息を呑む間もなく、首筋に鋭い痛み。



『──っ…!』



血を啜る熱。

吸い上げられる感覚に、膝が崩れそうになる。


身体の奥を侵されていくようで、抵抗しようとしても力が抜けてしまった。



「……うわ、不味。契約者の血の味ってこんなに変わんの?」



熱い吐息が肌を撫でる。



「やっぱ、これしかないな」



朔は口元を拭いながら銃口へ再び視線を落とした、その時だった──。


ドォンッ!!


振動と共に壁が崩れたような大きな音が背後から襲いかかる。

瓦礫が飛び散り、熱風が髪を乱した。



思わず腕で顔を庇いながら、その圧倒的な衝撃に弾かれたように振り返ると…。

白い砂塵と炎の向こう側から、ゆらりと、ひとつの大きな影が現れた。



「──胡桃から、離れろ」



ドクン、と心臓が跳ね上がる。



…それは、今ここに1番来てはいけない人。

なのに、その姿を見た瞬間、どうしようもなく安堵してしまった。



< 333 / 406 >

この作品をシェア

pagetop