総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「ふふ、あははっ!君は大人しくしてくれればいいの。そしたら何もしないから、ね?」
…本気だ。
これはもう、ただの脅しじゃない。
朔を止めなきゃ。
こんなことしたら、本当に朔が朔じゃなくなっちゃう。
銃口が自分に向けられていないことだけは分かる。
…朔が狙うのは、叶兎くんだ。
『こんなことしたら、ほんとに悪人になっちゃうよ…!!私、朔にこんなことして欲しくない!!』
震える声で必死に叫ぶ。
けれど返ってきたのは、底の見えない歪んだ笑みだった。
「大人しくしててよ。」
次の瞬間、背中が乱暴に壁へ押しつけられる。
息を呑む間もなく、首筋に鋭い痛み。
『──っ…!』
血を啜る熱。
吸い上げられる感覚に、膝が崩れそうになる。
身体の奥を侵されていくようで、抵抗しようとしても力が抜けてしまった。
「……うわ、不味。契約者の血の味ってこんなに変わんの?」
熱い吐息が肌を撫でる。
「やっぱ、これしかないな」
朔は口元を拭いながら銃口へ再び視線を落とした、その時だった──。
ドォンッ!!
と振動と共に壁が崩れたような大きな音が背後から襲いかかる。
瓦礫が飛び散り、熱風が髪を乱した。
思わず腕で顔を庇う。
衝撃に私は思わず振り返ると、砂塵の向こうから、炎を背負って影が現れた。
「──胡桃から、離れろ」
心臓が跳ね上がる。
…それは、今ここに1番来てはいけない人。
なのに、その姿を見た瞬間、どうしようもなく安堵してしまった。