【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




「叶兎くんには、俺の後継者候補として、この街の治安向上という任務を課していた。その成績次第で判断すると」



その瞬間、病室にいる全員の空気が一斉にざわめいた。



「……後継者、って…!」
「マジかよ……」



九条くんと天音くんが目を見合わせ、低く呟く。



『叶兎くんが……お父さんの……?』



私も思わず疑問が零れる。

目の前で次々と明かされる規格外の事実に、心が追いつかない。


父は静かに頷き、叶兎くんを真っ直ぐに見据えた。



「今までの君の活躍は全て見ていた。その上で、俺の後継者に相応しい器だと判断した」

「……え」



叶兎くんの顔にはっきりとした驚きが浮かんだ。

けれど父は容赦なく、さらに問いを重ねる。



「ただ……トップに立つということは生易しいものじゃない。今の君に、本当にその覚悟はあるかい?」



一瞬の沈黙。


叶兎くんは一度目を伏せ、深く息を吐いた。

そして顔を上げたその瞳には、真っ直ぐと強い光が宿っていた。



「覚悟は出来ています」



澄んだ声がはっきりと響く。

力強く、迷いの欠片もない。



「ではもう一つ……君は、生涯かけて…胡桃を守り切ることができる?」



空気が張り詰める。

思わず心臓が跳ねて、私は息を呑んだ。



わ、私……!?

叶兎くんは躊躇う素振りすら見せず、躊躇なく力強い一歩を踏み出した。

真っ直ぐに父を見据えるその横顔は、強くて、揺るぎなくて。



「どんなことがあっても、命を懸けて、守ります」



その言葉は鋭くも温かく、胸にまっすぐ突き刺さった。


父はじっと叶兎くんを見つめる。

長い沈黙の末、ふっと口元に笑みを浮かべた。



「良い目だ。……赤羽叶兎。君を正式に“後継者”として認めよう」



叶兎くんの瞳が見開かれた。

そしていつものように、自信に満ちたあの笑みを浮かべるその姿は…普段よりもずっと凛として見えた。



「胡桃。」



父の声が、今度は私を呼ぶ。

その目はさっきまでの鋭さとは違って優しい目で。



『……?』



小さく首を傾げる私に、父は言葉を置く。



「彼がトップになることによって、選択肢が二つある」



真剣な声色に、ごくり、と息を呑む。



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