【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





その夜。




寮が静まり返った頃、俺は机に向かって報告書をまとめていた。

ペン先が走る音だけが静寂の中に響く。



俺の血筋能力は“空間把握”──表向きにはそう伝えているけど…実際の能力はそれだけではない。


本質は…相手の感情の流れが読める。

流石に心を読む事までは出来ないけど、心の底にある迷いや葛藤の温度を感じ取ることはできる。



あの時、暴動の現場で赤羽叶兎から感じ取った波動は──圧倒的な『責任感』と、仲間を想う『深い熱量』。

吸血鬼界のトップの後継者になる土台としては、文句のつけようがない素晴らしい器だと感じた。



でも、彼はきっと…全部自分で背負おうとするタイプだ。

それが赤羽叶兎という男の最大の強さであり、危うさでもある。



窓の外を見ると月が淡く光っていた。

風がカーテンをふわりと揺らす。



…それよりも、一つ引っかかった事がある。



White Lillyのメンバーの1人──栗栖天音。

柔らかい光のような目をした彼からは、微かな陰を感じ取っていた。

明るさの裏に潜む“罪悪感”と……強い願い。



恐らく彼は……仲間に言えないような、後ろめたい何かを隠している。

そしてまだ、誰1人としてその闇に気づいていない。



……ま、俺の仕事は干渉しない事が前提だから。彼らには黙っておくけどね。

栗栖天音のその闇が表に出た時どう対応するのか。

それも全部…監視対象。



今週分の報告書を書き終え、ペンを置く。

それが俺の“観察者”としての判断。



──麗音さん。



あなたが期待する後継者は…きっと想像以上に、

まっすぐで、不器用な人です。




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