総長は、甘くて危険な吸血鬼
「……でも、そっか。全部お見通しってわけだ。」
「まぁね。……だから、体壊す前に休んで。胡桃とも、きちんと話して。」
声は柔らかいけど時雨の言葉が正確に痛いところを突いてくる。
「叶兎が何を思って、どうしたいのか──そういう本音も全部。あの子に隣に立ってほしいなら、まっすぐ伝えればいい。」
その優しい声に、少しだけ気を緩めても良いかもと思った。
どこかで、本音を伝える事が怖いと思っていた。
…でも、このままじゃダメだ。
「……ありがとう、時雨。」
「俺の方こそ仲間に入れてくれてありがとう。──今回の仕事は、かなり楽しかったよ。」
軽く笑って、それだけ言い残し時雨は部屋を出ていく。
…でも、去り際の背中がどこか“終わり”を感じさせたから、慌てて閉じかけたドアを開けた。
「待て──!」
けれどそこに時雨の姿はなかった。
その代わりに、ドアの前で驚いたような顔で立っていたのは──
『わっ……!? 叶兎くん……!』
胡桃だった。
顔を見た瞬間、息を呑んだ。
安堵で、張り詰めていた糸が切れたように、体の力が抜けていく。
ふらりと胡桃の肩にもたれかかるように、胡桃を抱きしめた。