【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「……でも、そっか。全部お見通しってわけだ。」
「まぁね。……だから、体壊す前に休んで。胡桃とも、きちんと話して。」
声は柔らかいはずなのに、時雨の言葉が正確に痛いところを突いてくる。
「叶兎が何を思って、これからどうしたいのか──そういう泥臭い本音も全部さ。あの子にずっと自分の隣に立っていてほしいなら、格好つけずに真っ直ぐ伝えればいいじゃん」
その優しい声に、少しだけ気を緩めても良いかもしれないと思った。
どこかで、本音を伝える事が怖いと思っていた。
…でも、このままじゃダメのも、わかっている。
「……ありがとう、時雨。」
「俺の方こそ。仲間に入れてくれてありがとう。──今回の仕事は、かなり楽しかったよ。」
軽く笑って、それだけ言い残し時雨は部屋を出ていく。
…でも、去り際の背中がどこか“終わり”を感じさせたから、慌てて閉じかけたドアを開け放った。
「待て──!」
けれどそこに、時雨の姿はなかった。
その代わりに、ドアの前で驚いたような顔で立っていたのは──
『わっ……!?叶兎くん……!』
胡桃だった。
顔を見た瞬間、息を呑む。
安堵で、張り詰めていた糸が切れたように、体の力が抜けていく。
俺はふらりと前へ踏み出し、胡桃の肩に倒れ込むかのように、胡桃を抱きしめた。