総長は、甘くて危険な吸血鬼





『もー……とりあえず、一旦ベッド行こ』



私は腕を支えて半ば引きずるようにしてベッドまで連れていく。
けれど叶兎くんは、ふらつく体でなおもデスクへ手を伸ばした。



「待って、まだ今日中にやらなきゃいけない資料が……」

『え、この状態でまだ仕事するつもり……?』



思わず声を上げて、腕を掴んだ。

叶兎くんは立ち上がろうとしたしたけど、足元がふらついてそのままベッドに腰を下ろす。


『いいから寝て……! いい加減休んで!!』


そのまま勢いで布団をかけると、叶兎くんは観念したように目を伏せた。

もう仕事なんてできる状態じゃないんだから、いい加減休んでもらいたい。流石に今の状態は見過ごせないよ。

ようやく諦めてくれたかと胸を撫で下ろした、その時。



「胡桃が一緒に寝てくれるなら、寝る」



叶兎くんがボソッと突拍子もない事を言い始める。



『えっ……な、なんで……!?』



思考が追いつかないうちに、叶兎くんの手が私の指を絡め取る。

いつもより体温が高く熱を帯びた掌から温もりが伝わってくる。



「……嫌?」



少し甘えるような声。
上目遣いで覗き込むその瞳は、反則級に優しくて。

……もう、その顔ずるい。



『……い、嫌じゃないけど……寝るまでだからね……?』



観念してそう言うと、叶兎くんは満足そうに布団の端を持ち上げた。
その隙間に私はそっと身を滑り込ませる。

途端に叶兎くんの腕が伸びてきて、背中からそっと腰を抱き寄せられた。
ぎゅっと力がこもって、背中から体温が伝わってくる。


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