総長は、甘くて危険な吸血鬼
「二人とも、元気そうでよかった」
凛ちゃんの後ろから流風くんもやってきて、穏やかに笑って言った。
「みんなもね。WhiteLillyの方は最近どう?」
「まあそれなりにうまくやってるよ」
あれから、みんなで顔を合わせる機会はぐっと減った。
それに卒業後は本部での活動が中心になるから、叶兎くんは自分の後を託すように総長の座を流風くんへ譲ったのだ。
街を守るチームが、これからも続いていけるように。
「良かった。でも、もし俺の力が必要な時はいつでも呼んで。流風のことだからあんまり心配してないけど」
流風くんと叶兎くん、私が見てる限り2人で1緒にいる時間はあんまり無かったけど二人の間には確かな信頼関係があった。
2人の交わす表情がそれを物語っている。
「そういえば、羽雨──じゃなくて、時雨は来てねーの?」
九条くんがそう言って辺りを見回すと、桐葉くんが腕を組んで答えた。
「……今はもう本部の人間だし、会場にはいるんじゃないか?」
「羽雨って呼び方、まだ抜けないよね」
天音くんが軽く笑って、春流くんも頷く。
「分かる。時雨が麗音さんの指示で学園に来てたって話、聞いた時はびっくりしたもん」
「同感だ。まさか羽雨が、あの一ノ瀬時雨さんだったとはな」
──叶兎くんとのあの夜の翌朝。飛鳥馬くんは皆の前で真実を全て話してくれた。あれが飛鳥馬くんとして話した最後の日。
それ以来、彼は本部へ戻り“飛鳥馬 羽雨”という名前は学園から消えた。
私と叶兎くんは手続きで本部に行くことがあったから“” 一ノ瀬時雨“としての彼と時々顔は合わせていたけど、やっぱり中々慣れなくて。
『また、みんなで集まれたらいいね…!』
自然とそんな言葉を口にしていた。
私にとって白星学園で過ごした日々は短かったけど、あの時間があったから今の私たちがいる。
あの場所で皆で笑い合った記憶は私にとっては宝物だ。