総長は、甘くて危険な吸血鬼




「よ、久しぶり。元気そうだな」



そんな私達の間に自然と入ってきたのは、蓮水さん。

少し髪が伸びて表情が前より柔らかくなっている。



『蓮水さん! 久しぶり……!』



蓮水さんは穏やかに微笑みながらこちらに近づいてきて、一度深呼吸をした後真剣な顔つきになって、一歩前へ出た。



「……あの時、皆には迷惑をかけた。本当にすまなかった。」



深く頭を下げる蓮水さんの姿に、思わず息をのむ。

みんなも、言葉を失ったように蓮水さんを見つめていた。



「……それと、礼も言わせてくれ。あの時、敵の立場だったにも関わらず、俺を信じてくれてありがとう。」



その声は迷いがなく、誠実だった。



『蓮水さん……』



静かに名前を呼ぶと、その視線が真っ直ぐ私へと向けられる。



「あんたがいなきゃ、きっとあいつは壊れてた。あの日からようやく元の朔に戻ったんだ……本当に感謝してる。」



その言葉に胸がじんわりと温かくなる。

蓮水さんの優しさが、痛いくらい伝わってきた。



『……蓮水さんがいたからだよ。』

「え……」



驚いたように目を見開く蓮水さんに、私はまっすぐ言葉を返す。



『蓮水さんは敵だった私たちに、正直に協力を頼んでくれた。朔は……私にとっても大切な幼馴染だから。だからこちらこそ、朔を信じてくれてありがとう。』



そう伝えると、蓮水さんの口元が静かに緩んだ。



「……あんた、どこまでもお人好しだな。」



その言葉は呆れたようで、でも嬉しそうでもあった。

朔の隣にはこんなにも優しい友達がいる。

もう、彼はひとりじゃない。


蓮水さんはもう一度だけみんなにも「ありがとう」と小さく呟き、また人混みの中へと姿を消していった。




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