総長は、甘くて危険な吸血鬼
「………………は?」
振り下ろされる直前
咄嗟に彼女の肩を引き、反対の手でモップを奪い取る。
背後から抱えるように拘束して、持ち手を彼女の顔の前に突きつけた。
『喧嘩なら…受けて立つけど?』
お父さんに教わった護身術が役に立つ日が来るなんて思わなかった。
ありがとうお父さん。
男子相手にはちょっと不安なところはあるけど、相手が普通の女子ならそうそう負けることは無いだろう。
「な、………」
囲んでいた女子たちが一斉に気圧され、視線を逸らす。
『…少しでも彼らに近づきたいって思うなら、ちゃんと、本人を見てあげなよ』
「…は?」
私だって昨日転校してきたばっかだし彼らのことはよく知らないけど。でも、そう見えたから。
呆然とする声を背に私はモップを床に置いた。
集団をかき分け、廊下に出る。
そして──
「胡桃…」
廊下を曲がってすぐそこで私の名前を呼んだのは、
赤羽くんだった。