【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
え………
今の見てた?
嫌な予感が脳裏を駆け巡る。
血の引いていく感覚に、私は恐る恐る尋ねた。
『あ、赤羽くんいつからそこに…』
赤羽くんは気まずそうに視線を泳がせながら、ぽつりと呟いた。
「“何なのって、何が…”あたりから」
……ほぼ最初からじゃん!!!
頭の中でパニックが巻き起こる。
よ、よりによって1番見られたくない人に…!
というか、最初からそこにいたなら助けてくれてもよかったんじゃないの!?
なんて一瞬思いかけたけれど、冷血な赤羽くんがそんなヒーローみたいな真似をしてくれるはずもないか、とすぐに思い直す。
「…胡桃、ご──」
赤羽くんが何かを言いかけて、私の方へ一歩踏み出してくる。
けれど今の私には彼の言葉を聞く余裕なんて一ミリも残っていなかった。
『私っ、今急いでるから行くね!じゃあね!』
「あ、おい!俺の話を、待てって」
私は思わず反射で逃げた。
さっきの“喧嘩なら受けて立つけど”なんてかっこつけた台詞が頭の中でリフレインして、顔から火が出そう。
見られてたの、恥ずかしすぎる。
私は赤羽くんの叫び声を振り切って、一目散に走り続けた。