【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「…転校早々授業サボるなんて、胡桃も問題児デビューだね」
『それ言ったら叶兎くんもだよ?』
軽口を叩き合いながら時計を見ると、もう1限が始まっていた。
まあ、生徒会権限を使えば出欠なんて誤魔化せる。普段は真面目に出てるしたまにはいい。
「俺は元々問題児認定されてるから、セーフ」
『それ何もセーフじゃない!』
問題児…とはちょっと違うけど、吸血鬼は監視されることが多い。
俺もきっと、裏では学園からは要注意人物とかそういう風に見られているんだろう。
本当に……吸血鬼ってやつは面倒くさくて嫌になる。
それからしばらく、二人でソファーに並んだまま無言の時間が流れた。
けれど、その沈黙は少しも苦じゃなかった。
むしろ、流れる空気が心地よくて、このままずっと時間が止まればいいのにとさえ思えた。
「ねえ、胡桃」
『……』
「胡桃?…あれ、寝てる」
ふと返事がないことに気づいて横を見ると、小さな肩が俺の腕にすっぽりと預けられていた。
規則正しい小さな寝息。
最初は俺が寄りかかっていたはずなのに、いつの間にか立場が逆になっている。
無防備に体温を預けてくる胡桃の横顔を、じっと見つめた。
「……こんな感情、初めてだな」
隣で眠る胡桃に、小さく呟いた。
胸の奥に芽生えたものを確かめるように。
その温もりに安心しながら、
俺も静かに目を閉じた。