【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
…………え、どういう、こと?
だって、叶兎くん、“女嫌い”って…
あの子は誰?吸血鬼…?
血を吸われているというのに、叶兎くんの表情は驚くほど穏やかだった。
嫌がる素振りなんて微塵もなく、むしろ愛おしそうにその女の子の頭を優しく撫でている。
ズキリ、と胸の奥が激しく痛んだ。
……なんか、嫌だな…
さっき叶兎くんが言ってくれた“好き”は、やっぱり嘘だったのかな。
私を特別扱いして、優しくして、甘い言葉を囁いてくれたのは……結局、私の珍しい『血』が欲しかっただけ。
ただの餌として、私を繋ぎ止めておきたかっただけなんだ。
分かってたのに。
最初から分かってたはずなのに。
改めてこうやって現実を突きつけられると胸が締め付けられる。
「あれ、胡桃ちゃんどこ行くの?!」
いてもたってもいられなくなった私は流風くんの呼びかけを気にも止めず、逃げるように建物の外へ飛び出した。
叶兎くんに、どんな顔して会えばいいか分からない。
どこに向かう訳でもなく、ただひたすら走った。
ほんと私どうしちゃったんだろう…
このモヤモヤは何…?