私を、甘えさせてください
香奈の前だと言うのに、私は涙を抑えることができなかった。


「みづきちゃん、どこかいたいの?」

「香奈、みづきちゃん、心が痛いんだよ」

「こころ?」

「そう。香奈、ママがいつもしてるみたいに、ぎゅーーーってしてあげて」


葉月にそう言われ、香奈が私の身体に腕を回す。


「みづきちゃん、だいすき!」


無邪気な笑顔に、余計に涙が込み上げる。


「美月ちゃん、ティッシュどうぞ。たくさん泣くとスッキリするから、まず泣いて。
話はそれから。ね?」


湧き上がる涙が少し収まってきたところで、私は少しずつ、空川さんとのことを話し始めた。

出会ってから、さっき井川に聞いた話までを。


「そうかー。うーん・・・・」

「葉月?」

「私は美月ちゃんに話を聞いただけだから、その印象でしか言えないけど、その人、今も本当に不倫相手と続いてるのかな・・」

「どういうこと?」

「美月ちゃんのこと、かなり好きだと思うんだけど、だとしたら、美月ちゃんが悲しむようなことするかなって。
あー、でも・・・・」

「でも?」

「うん・・もしかしたら遠距離にいて、めったに会えなかったりしたら、同時にとかあるのかな・・」


そうなのだ。

少なくともこれまでは、他の誰かの存在を感じることは無かった。


「仕事柄、海外にもよく行ってたみたいだし、海外にいるのかもしれない・・・・」

「美月ちゃん、その人とどうするつもり?」

「どうするも何も・・・・どうにもできないよ。ただ終わらせるだけ」

「そっか・・・・代わり、ってわけじゃないけど、その井川さんていう人はダメなの?」

「え? だって元カレだよ。ないない」

「でもほら、別れたのなんて15年も前でしょ? いま付き合ってみたら、またちょっと違うかもしれないし」

「まぁ・・選択肢として残しとく」


お昼ご飯を一緒に食べて、香奈がお昼寝したのを見計らって帰ることにした。

起きている時に帰ると、寂しがって泣くからだ。


「美月ちゃん、辛くなったらまた来て」

「うん、ありがとう。じゃあね」

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