私を、甘えさせてください
カタカタカタカタ・・。

まだ少し手が震えている。

私は、騙されているの?
それとも、事実がどこかでねじ曲がっただけ?


確かめようがない。


そういえば、前に酔った空川さんが言っていた。

『・・・・美月に嫌われそうだから、言いたくない』

あれはもしかして、このことだったのだろうか。


でもクビはともかく、不倫相手とのことは、嫌われる以前の問題だと思うし・・。


ダメだ。
いくら考えても何も前に進まない。

井川が届けてくれたバッグを手に、私はビルを後にした。


「もしもし、葉月(はづき)? 今から行ってもいいかな?」

『美月ちゃん? 珍しいね、こんな朝早くに。いいよ、香奈(かな)と待ってるね〜』


私は久しぶりに、妹に会いに行くことにした。

妹と姪の顔を見たら、少しは気が晴れるんじゃないかと思い、ふたりの好きそうな洋菓子を買って妹の家に向かった。


「みづきちゃん!」

「かな〜! また大きくなったね」


パタパタと走ってきて、姪が玄関まで出迎えてくれた。
もう可愛くてどうしようもない。


「美月ちゃん、いらっしゃい!」

「葉月、急にごめんね。はい、これお土産」

「ん? 何かな? わ! エクレアにシュークリームだ。すぐお茶にしよう!」


にぎやかに迎えられ、自然と顔がほころぶ。


「みづきちゃん、おさらどうぞ!」

「かな、ありがとう! ねぇ、かな何歳になったの?」

「3さいだよ。もうすぐようちえんにいくの」

「そっかー、すごいね!」

「ほら、香奈はシュークリーム食べようか。ところで・・・・美月ちゃん、何かあった?」

「ん?」

「来た時から、目が潤んでるから」


そう言われて、ずっと泣くのを我慢していたことに気づいた。

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