私を、甘えさせてください
整理できていないのもあるけれど、事実以外にもうひとつ分からないことがあった。

なぜ私を?
なぜ私に?

それが、どうしても分からない。


『暇を潰すのに、私はちょうど良かったのかもしれない』

自分でそう定義づけてみたものの、やっぱり腑に落ちない。


その時、頬に井川の指が触れた。


「あいつのこと、考えてたろ?」

「あ、うん、ごめん・・・・」

「いいけど。そういう物憂げな顔されると、触れたくなる」


頬に置かれた指が、つーっと唇に移動した。
唇の上を動く指の感触に、ふと思った。


いっそこのまま井川に抱かれてしまえば、気が楽になるだろうか・・・・。


そう考えてしまうほど、やり場のない想いが胸にあふれる。


「そういう顔するなって。俺だって、こう見えて結構我慢してるんだぜ」


唇から離れた手は、頭を軽くポンとなでてから、ビールのグラスに戻っていった。

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