私を、甘えさせてください
「それだけ?」

「え?」

「それは俺じゃない・・って、言い訳しないの?」

「・・俺でも、俺じゃなくても、俺の家で起こったことのせいで、美月を泣かせたことに変わりはないから。
まずは、謝るべきかなって」

「・・そっか」

「それで・・・・。何ていうか、その・・。
信じてもらえるかどうか自信は無いけど・・・・それは、俺じゃないんだ」

「うん」

「えっ?」

「分かってる」

「信じるの?」

「うん」

「どうして? 美月、あんなに泣いてたから・・俺じゃないっていう証明を・・」

「もう、大丈夫」


だって、もう分かってるから。

今日ずっと一緒にいて、拓真じゃないって分かったから。


「本当に信じるの?」

「だって、信じるもなにも、拓真じゃないんでしょ?」

「そう・・だけど。じゃあ、もうひとつ、ごめん」

「ん? なに?」

「俺、『愛してる』とか言わないから、多分そこも、美月を傷つけたんじゃないか・・って」


それを言わない人だから、違うと分かった・・なんて、言わずにいたほうが良さそうだ。


「『ごめん』はもういいから・・それよりもたくさんキスして」


私は、彼の首に両腕を絡めた。


「いくらでも。美月がもうやめてっていうまでするよ・・」


彼は、唇を合わせながらささやいた。

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