私を、甘えさせてください
その場を立ち去ろうとした私の腕をつかんで、彼女は引き止めた。


「永田さん、そんなのダメです。
拓真さんは・・拓真さんは永田さんとずっと一緒にいるんだって・・」


そう言って口をつぐむ。


「・・・・絶対に黙ってろと言われたんですけど・・・・拓真さん、教会を予約してるんです」

「・・・・え?」


教会?

それって・・。


「だから・・関係を見直すなんて、言わないでください・・。拓真さん、和真さんが呆れるくらい嬉しそうにしていて」

「優さんありがとう、教えてくださって。だけど、私たち離れてしまうの。
遠距離恋愛するほど、エネルギーも無いし」

「永田さん、どこに赴任するんですか?」

「え? 香港だけど」

「それ、拓真さんは知ってるんですか?」


そう問われて、どうだろうかと考えた。

私が伝えようとした時は電話で遮られてしまって、その前にはシドニーに空きがあると言っていたような・・。


「もしかしたら、知らない・・かも」

「そんな・・・・。じゃあ逆に、永田さんは拓真さんが赴任する場所をご存知ですか?」


そういえば、はっきりとは聞いていない。

『毎晩海外との会議に出てたんだ』

夜の会議と聞いて、勝手にヨーロッパかアメリカだと思っていた。


私は、首を横に振る。

それを見た優さんが苦笑いした。


「似たもの同士なんですね。オトナのふたり。
だけど、いつもオトナぶってたら、大事なモノ失くしちゃいますよ」

「優さん・・」

「もうすぐ17時だし、連絡取ってみたらどうですか? 拓真さん、きっと待ってます。
あ、良かったら私が電話しましょうか?」

「あー、大丈夫。自分で・・」


慌てて止めると、優さんがクスクス笑った。

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