一面の落とし穴

頬⑤

ある日の夜、一通のメールが来た。

会社の後輩からだった。

体調はいかがですか?

彼女は僕の後輩で普段は少しおっちょこちょいなところがある。

僕の話を聞くといつも笑ってくれる。

僕の話を聞いて笑う人は珍しい。

いつもは控えめで自己主張をあまりしないタイプだが、自分の中で譲れないものを持っている性格ではあった。

彼女にも黒い影はあったが、それを自ら話すことはなかったし僕もそれを問いただすことはしなかった。

彼女は黒い影とうまく付き合っているのかもしれない。

いや、もしかすると黒い影に悩まされた経験を持っているのかもしれない。

なんと言っても彼女の特徴はナタデココのように弾力のありそうな頬だ。

僕は女性の頬に凄く興味がある。

マシュマロのように柔らかそうな頬も好きだし餅のような頬、プリンのような頬も好きだ。

彼女の笑顔は相手に隙を作らせるくらい魅力的だ。

僕はいつも彼女と話す時、冗談をよく言う。

彼女は一瞬本気に受け止めるが、冗談であることを伝えると笑ってくれた。

徐々に僕の冗談も通じなくなると、「どうせ冗談なんでしょ?」と言うようになった。

それでも彼女は冗談を喋りたくなるくらい愛嬌がいいのだ。

ある日の昼休みの時だ。

彼女は休憩室のソファで体半分を横にしていた。

僕はその後ろの棚にあるコーヒーを取ろうとした時、つまずきかけた。

転けて抱きついてしまったらごめんねと言うと、もちろんそんなことをするつもりはなかったが、彼女はどうぞと言った。

いつもなら適当に受け流す彼女だが、その日の様子は違った。

きっと僕の勝手な思い込みだろう。

話を戻すが彼女もその後、気をつかいながらも連絡をくれた。

ある日、僕はリハビリがてらに彼女を食事に誘った。

彼女の日程に合わせて会う約束をした。
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop