極上の愛に囚われて

 実際、会員にはVIPな人が多く、誰もがゆっくり静かな時間を過ごしている。

 本来なら、私にはとても似合わない高級なBAR。きっかけがなければ、存在さえ知らないだろうお店。

 カウンター席に座るとマスターは笑顔になり、自分の髪を撫でる仕草をした。

「今日は、随分綺麗にしてるんだねぇ」
「うん、パーティの帰りなの。いつものをください」

 いつもの席。いつものカクテル。〝いつも〟で通じるほどに常連になってしまった。それほどの長い期間、ここにきている。

 手際よくシェイクしてくれたカクテルが、よく磨かれたグラスに注がれる。

 海のような青色。美しいけれど、グラスの向こうを見透かせない液体は、私の心そのものだと思う。

 見かけは綺麗だけど、濁った心。

「どうぞ」と出されたそれを、一気に飲み干した。

 チリンと、僅かな鈴の音が鳴ってドアが開き、背の高い男性が入ってきた。上等なスプリングコートを脱いでマスターに預け、私に向かって微笑む。

 微笑みのまままっすぐ歩いて来て隣に立ったのは、私を高級BARブルームの常連にした彼。私が恋をしている人だ。

「ゴメン、待ったね?」
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