極上の愛に囚われて
道にある靴を取ろうとしても、ちっとも動かない。細くもないヒールがすっぽりと穴に嵌っていて、抜こうとしても簡単に抜けなかった。
周りに人はいたけれど誰も脚をとめず、通りすぎていってしまう。
遠くからこっちを見てヒソヒソするだけのおばさんたちもいる。
みんな冷たい。痛みと情けなさで目に涙が浮かぶ。
それでも道に嵌った靴をなんとか取ろうと、格闘している私に声をかけてくれたのが彼だった。
『取れませんね。僕がやってみましょうか』
『は、はい……』
彼が私のそばに来たとき、さわやかな風が吹いたようだった。誰も助けてくれない中で、唯一手を差し伸べてくれた人。すごくありがたかった。
男性の力は強いからか、すぐに靴が抜けた。けれどヒール部分が壊れており、履いても歩けない状態になっていた。
『ありがとうございます』
『でも靴が壊れてますよ』
『ええ、でも、会社に戻れば替えがありますので、なんとか、そこまで履いていきます』
再度お礼を言って立とうとすると、脚に激痛が走ってよろけてしまった。膝を強く打っていて血が滲んでいるし、足首も捻ったみたいだった。