極上の愛に囚われて
『いたたたた……』

 顔を歪めている私に彼が『病院に行きましょう』と言い、『手を貸しますよ。掴まってください』と腕を差し出してきた。

『とんでもないです。ご迷惑かけますし、平気ですから』

 これ以上、知らない人の手を煩わせたくなくて、歯を食いしばって立ち上がる。ゆっくり歩けば大丈夫だろう。適当なところでタクシーを拾えばいい。

 そう思ったのだけど、痛めた脚で壊れた靴を履いて歩くのは至難の業だった。不安定なヒールのせいで足首がくにゃりと曲がり、激痛が走る。

『いたっ』
『平気じゃないだろう!?』

 強い声音で言われたあと、急に体が宙に浮いた。

『きゃぁっ、なんで?』

 横抱きにされていて、眉間にしわを寄せる彼の顔が間近にあった。

『やせ我慢は禁止です。とても放っておけません。強引ですが、病院に連れて行きますよ。僕の車にのってください。すぐそこの総合病院ですから、五分もあれば着きます』
『えっ!? ちょっと、待ってください。下ろしてください! すぐそこなら、歩いていきますから!』
『ダメです。その足は、歩いたら悪化するでしょう』
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